2019年4月例会 「朝・米問題、どうとらえるか」 ー東アジアの平和のためにー

4月7日(日)団地住民センターにおいて、22名の市民の皆さまの参加で、第73回例会を開催しました。
演題は、「朝・米問題、どうとらえるかー東アジアの平和のためにー」です。

講師は、林 炳澤(イム・ピョンテク)さん。在日韓国人(2世)として、祖国統一、在日同胞の権利擁護の運動に長く取り組んでこられました。「日本の戦後責任を清算するため行動する北海道の会」、NPO法人さっぽろ自由学校「遊」などの共同代表を務め、また日本の友人たちと広く連帯し平和と人権のための活動をされています。



2018年6月シンガポール、2019年2月ハノイで行われた、金正恩委員長(朝鮮民主主義人民共和国)とドナルド・トランプ大統領(アメリカ合衆国)による2回の首脳会談は世界の注目を集めました。

この歴史的会談から何を読み取り、どう評価し、平和的解決に向けて日本がどういう役割を担っていくのか、それを考えることが重要と林(イム)さんは言います。まずは、朝・米問題を根本から理解するために、第2次世界大戦前後から朝鮮分断にいたる歴史を知り、朝・米間の確執と根深い不信の原因を理解することが欠かせない、と訴えました。

 

以下に講演の概要を記します。

昨年、朝・米間で、70年の激烈な敵対関係を越えて史上初の現役首脳会談が実現しました。朝鮮民主主義人民共和国の安全保障と朝鮮半島の完全非核化をめぐりトップダウンの交渉が始まりましたが、今年2回目の首脳会談は“もの別れ”という結果に終わりました。
これらの会談の結果を正確に評価するためには、以下の3つの視点を押さえる必要があると言います。

 

1. 南北分断に至る歴史を知る

 第2次世界大戦終了後、朝鮮は日本の植民地支配から解放され、国家建設に向かいます。当初、北緯38度線を境に米ソ分割占領となりますが、民族主体勢力として、建国準備委員会(建準)が設立、組織化されていきます。

 しかし、共産主義の拡大を恐れた米国は、朝鮮情勢にくわしく利害の一致する反共・親日派を利用し、民族主体運動・民族統一運動の抑え込みを行っていきます。モスクワ協定も反古とし、米国は、国連(米の影響力大)に朝鮮問題を付託、という形で南部朝鮮の単独選挙を断行、大韓民国を唯一合法政府とします。この間、米軍政は済州島(チェジュ島)4・3抗争などの反対運動を弾圧し、2万人以上の犠牲を出しています。そして、北からの侵攻を機に朝鮮戦争が勃発、53年の休戦で南北分断が固定化しました。


2. 民族分断の痛みを理解する

 朝鮮戦争(’50-’53年)は、同民族同士の殺戮があり、甚大な被害と約1千万人の離散家族、そして南北間の憎悪を生みました。この南北分断の悲劇は、もともとは日本の植民地支配に端を発したとも言え、他人事では済まされません。隣国の苦しみに寄り添い、南北融和のために日本ができる貢献は、いくらでもあるはずです。(スポーツの世界では、1991年の卓球世界大会⦅千葉⦆南北統一チーム結成へ、日本人の働きかけがありました)


3. 平和解決を求める、という立脚点に立つ

 日本では、「北朝鮮悪玉論」が染み付き、「北の完全非核化」に偏重した評価が主な論調としてなっています。これは日本がアメリカ社会に組み込まれていることにもよります。しかし、戦争を起こさせない、そして真に平和を求めるのであれば見方は変わってくるはずです。朝・米間の国力の格差を考えれば、先に譲歩策を打ち出すべきは米国側ではないでしょうか。朝鮮戦争の終結も含めて“もの別れ”に終わったとはいえ交渉の継続意思は示されています。日本がアメリカに働きかけるべきは、圧力の強化でしょうか?